株式会社の資本と税金 signal_cellular_alt 難易度 2 schedule 40分

株式会社の純資産 - 資本金・資本準備金の仕組みを理解しよう

株式会社の純資産の構造、資本金と資本準備金の違い、株式の発行と増資の仕訳について学びます。株式会社特有の会計処理をマスターしましょう。

学習目標

  • check_circle株式会社の仕組みと特徴を理解する
  • check_circle株式会社の純資産の構成要素を説明できる
  • check_circle資本金と資本準備金の違いを理解する
  • check_circle株式発行(設立・増資)の仕訳ができる
  • check_circle払込資本の2分の1ルールを適用できる

株式会社とは

**株式会社(かぶしきがいしゃ)**とは、株式を発行して資金を調達し、事業を営む会社のことです。簿記3級では、主に株式会社を前提とした会計処理を学びます。

株式会社の特徴

1. 株式による資金調達

株式会社は、株式を発行して投資家から資金を集めます。

  • 株式: 会社の所有権を細かく分割したもの
  • 株主: 株式を購入して出資した人
  • 資本金: 株主から集めた資金

2. 所有と経営の分離

  • 株主: 会社の所有者(出資者)
  • 経営者: 会社を経営する人(社長、取締役)

株主は経営に直接関わらず、株主総会で重要な意思決定に参加します。

3. 有限責任

株主の責任は出資した金額までに限定されます。会社が倒産しても、株主は出資額以上の責任を負いません。


株式会社の純資産の構造

貸借対照表の基礎で学んだように、純資産は「資産 - 負債」で計算される、企業の正味の財産です。

株式会社の純資産は、主に以下の項目で構成されます。

【株式会社の純資産の部】

純資産の部
├── 株主資本
│   ├── 資本金
│   ├── 資本剰余金
│   │   ├── 資本準備金
│   │   └── その他資本剰余金
│   └── 利益剰余金
│       ├── 利益準備金
│       └── 繰越利益剰余金
└── その他の包括利益累計額
    └── その他有価証券評価差額金(簿記3級では扱わない)

簿記3級では、株主資本の部分を中心に学習します。


資本金とは

**資本金(しほんきん)**とは、株主が会社に出資した金額のうち、資本金として計上した金額のことです。

資本金の特徴

  1. 返済義務がない: 株主への出資金は、借入金と異なり返済する必要がありません
  2. 会社の基本財産: 会社の経営基盤となる重要な財産
  3. 登記が必要: 資本金の額は法務局に登記され、公開されます
  4. 最低金額なし: 2006年の会社法改正により、資本金1円から株式会社を設立できるようになりました

資本金の役割

  • 事業資金: 会社の運営や設備投資に使用
  • 信用の基準: 取引先や金融機関が会社の信用力を判断する指標
  • 債権者保護: 会社の財務基盤を示し、債権者を保護する役割

資本準備金とは

**資本準備金(しほんじゅんびきん)**とは、株式の発行時に払い込まれた金額のうち、資本金として計上しなかった金額のことです。

資本準備金の仕組み

会社法のルール:

株式発行時に株主から受け取った払込金額の2分の1までを、資本金として計上しないことができます。資本金として計上しなかった金額は、資本準備金として計上します。

株式発行時の払込金額 = 資本金 + 資本準備金

【制約】
資本金 ≧ 払込金額 × 1/2

具体例

株式発行時の払込金額が1,000万円の場合

パターン1: 全額を資本金とする

資本金: 1,000万円
資本準備金: 0円

パターン2: 半分を資本準備金とする

資本金: 500万円(払込金額の1/2)
資本準備金: 500万円

パターン3: 最小限の資本金とする

資本金: 500万円(払込金額の1/2 = 最低限)
資本準備金: 500万円

注意: 資本金を払込金額の2分の1未満にすることはできません。

資本準備金を計上する理由

  1. 税金対策: 資本金が一定額以下の場合、税制上の優遇措置がある
  2. 柔軟な資本政策: 将来的に資本金に組み入れることができる
  3. 配当の原資: 条件を満たせば、配当の財源にできる

株式の発行(会社設立時)

それでは、株式会社の設立時における株式発行の仕訳を学びましょう。

例1: 全額を資本金とする場合

取引: 株式会社を設立し、株式1,000株を1株あたり1,000円で発行した。払込金額の全額を当座預金に受け入れた。払込金額の全額を資本金とする。

考え方:

  • 払込金額: 1,000株 × 1,000円 = 1,000,000円
  • 資本金: 1,000,000円(全額)
  • 当座預金(資産)が増加 → 借方
  • 資本金(純資産)が増加 → 貸方

仕訳:

借方:当座預金 1,000,000 / 貸方:資本金 1,000,000

例2: 一部を資本準備金とする場合

取引: 株式会社を設立し、株式1,000株を1株あたり1,000円で発行した。払込金額の全額を当座預金に受け入れた。払込金額のうち、会社法で認められる最低額を資本金とし、残額は資本準備金とする。

考え方:

  • 払込金額: 1,000株 × 1,000円 = 1,000,000円
  • 資本金: 1,000,000円 × 1/2 = 500,000円(最低額)
  • 資本準備金: 1,000,000円 - 500,000円 = 500,000円
  • 当座預金(資産)が増加 → 借方
  • 資本金(純資産)が増加 → 貸方
  • 資本準備金(純資産)が増加 → 貸方

仕訳:

借方:当座預金 1,000,000 / 貸方:資本金      500,000
                              資本準備金   500,000

例3: 現金で払込を受けた場合

取引: 株式会社を設立し、株式2,000株を1株あたり500円で発行した。払込金額の全額を現金で受け入れた。払込金額のうち600,000円を資本金とし、残額は資本準備金とする。

考え方:

  • 払込金額: 2,000株 × 500円 = 1,000,000円
  • 資本金: 600,000円
  • 資本準備金: 1,000,000円 - 600,000円 = 400,000円
  • 現金(資産)が増加 → 借方

仕訳:

借方:現金 1,000,000 / 貸方:資本金      600,000
                          資本準備金   400,000

確認: 資本金600,000円は払込金額1,000,000円の1/2以上なので、会社法の要件を満たしています。


増資(株式の追加発行)

増資(ぞうし)とは、会社設立後に新たに株式を発行して資金を調達することです。増資の仕訳は、設立時の株式発行と同じ考え方です。

例4: 増資の仕訳

取引: 事業拡大のため、新たに株式500株を1株あたり2,000円で発行し、払込金額の全額を当座預金に受け入れた。払込金額のうち600,000円を資本金とし、残額は資本準備金とする。

考え方:

  • 払込金額: 500株 × 2,000円 = 1,000,000円
  • 資本金: 600,000円
  • 資本準備金: 1,000,000円 - 600,000円 = 400,000円

仕訳:

借方:当座預金 1,000,000 / 貸方:資本金      600,000
                              資本準備金   400,000

増資の仕訳は、既存の資本金に加算される点に注意しましょう。


株式会社の純資産の表示

実際の貸借対照表での純資産の部の表示例を見てみましょう。

【貸借対照表(一部抜粋)】

純資産の部
  株主資本
    資本金                      5,000,000
    資本剰余金
      資本準備金    2,000,000
      その他資本剰余金  500,000
      資本剰余金合計             2,500,000
    利益剰余金
      利益準備金      300,000
      繰越利益剰余金 1,200,000
      利益剰余金合計             1,500,000
    株主資本合計                 9,000,000
  純資産合計                     9,000,000

各項目の意味

資本金

  • 株主からの出資金のうち、資本金として計上した金額

資本剰余金

  • 資本準備金: 株式発行時に資本金としなかった金額
  • その他資本剰余金: 自己株式処分差益など(簿記3級では詳しく扱わない)

利益剰余金

  • 利益準備金: 配当時に積み立てる法定準備金(剰余金の配当と処分で学習)
  • 繰越利益剰余金: 過去からの利益の蓄積

資本金と資本準備金の違い

項目資本金資本準備金
原資株主の出資金株主の出資金
性質会社の基本財産資本取引から生じた剰余金
登記必要不要
最低限度額払込金額の1/2以上残額(払込金額の1/2以下)
税制上の影響資本金額により税率が変わることがある資本金には含まれない
配当の原資原則として使用不可条件を満たせば可能
分類純資産 → 株主資本純資産 → 株主資本 → 資本剰余金

共通点

どちらも純資産に属し、返済義務のない自己資本です。貸借対照表の右側(貸方)に表示され、会社の財務基盤を示す重要な項目です。


法定準備金とは

**法定準備金(ほうていじゅんびきん)**とは、会社法で積み立てが義務付けられている準備金のことです。

2種類の法定準備金

1. 資本準備金

  • 株式発行時の払込金のうち、資本金としなかった部分
  • 原資: 資本取引(株主からの出資)

2. 利益準備金

  • 剰余金の配当時に積み立てる準備金
  • 原資: 利益(事業活動から得た利益)

法定準備金の上限

資本準備金 + 利益準備金 ≧ 資本金 × 1/4

資本準備金と利益準備金の合計が資本金の4分の1に達するまで、積み立てる義務があります。

詳しくは、剰余金の配当と処分で学習します。


設立時と増資の違い

項目設立時増資時
タイミング会社設立時会社設立後
目的会社を始めるための資金事業拡大のための追加資金
仕訳同じ仕訳方法同じ仕訳方法
資本金の扱い新規計上既存の資本金に加算

仕訳の方法は同じですが、増資の場合は既存の資本金に追加される点を理解しておきましょう。


株式発行の仕訳のポイント

ポイント1: 払込金額の計算

払込金額 = 発行株式数 × 1株あたりの発行価額

: 1,000株を1株2,000円で発行

払込金額 = 1,000株 × 2,000円 = 2,000,000円

ポイント2: 資本金と資本準備金の配分

会社法のルール:

資本金 ≧ 払込金額 × 1/2

資本金は払込金額の2分の1以上でなければなりません。

よくあるパターン:

  • 全額を資本金: 資本金 = 払込金額、資本準備金 = 0
  • 最低限を資本金: 資本金 = 払込金額 × 1/2、資本準備金 = 払込金額 × 1/2
  • 問題文で指定: 「〇〇円を資本金とする」と指示がある場合は、その金額を資本金とする

ポイント3: 預金口座の種類

  • 当座預金: 企業が通常使用する決済用口座
  • 普通預金: 一般的な預金口座
  • 現金: 現金での払込

問題文に従って、適切な勘定科目を使用します。


個人企業との違い

簿記3級では、個人企業と株式会社の両方を学習しますが、純資産(資本)の扱いが異なります。

個人企業の資本

  • 資本金: 事業主が事業に投入した資金
  • 引出金: 事業主が生活費として引き出した金額(費用ではない)
  • 資本金勘定: 資本金 + 当期純利益 - 引出金

詳しくは、Unit 09「個人企業の資本」で学習します。

株式会社の資本

  • 資本金: 株主からの出資金
  • 資本準備金: 出資金のうち資本金としなかった部分
  • 利益剰余金: 事業で得た利益の蓄積
  • 引出金はない: 株主は会社のお金を勝手に引き出せない

株式会社では、所有と経営が分離されているため、個人企業のような「引出金」の概念はありません。


まとめ

このレッスンでは、株式会社の純資産の構造と株式発行の仕訳について学びました。

重要ポイント

  • check_circle株式会社は株式を発行して資金を調達する
  • check_circle資本金: 株主からの出資金のうち資本金として計上した金額
  • check_circle資本準備金: 出資金のうち資本金としなかった金額
  • check_circle会社法のルール: 資本金 ≧ 払込金額 × 1/2
  • check_circle株式発行の仕訳: (借)当座預金 / (貸)資本金 + 資本準備金
  • check_circle増資の仕訳も設立時と同じ考え方
  • check_circle資本金・資本準備金はともに返済義務のない自己資本

次のステップ

次のレッスンでは、剰余金の配当と処分について学びます。株式会社が得た利益をどのように株主に配当し、法定準備金を積み立てるかを理解しましょう。