損益計算書の作成 - 5つの利益を正確に表示しよう
精算表から損益計算書を作成する手順、5つの利益の計算方法、勘定科目の変更ルールについて学びます。簿記3級試験の第3問対策として重要なレッスンです。
学習目標
- check_circle精算表から損益計算書を作成できる
- check_circle勘定科目の変更ルールを理解し、正確に適用できる
- check_circle5つの利益(売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益)を正確に計算できる
- check_circle損益計算書の作成における注意点を理解する
- check_circle簿記3級試験の第3問で損益計算書作成問題を解けるようになる
損益計算書の作成とは
損益計算書の作成とは、精算表や総勘定元帳から収益と費用の情報を集約し、企業の一定期間における経営成績を表す財務諸表を完成させる作業です。
損益計算書(P/L)の基礎で学んだように、損益計算書は企業の「成績表」であり、5段階の利益を段階的に計算することで、企業がどのように利益を獲得したかを明らかにします。
損益計算書作成の位置づけ
決算手続きにおける損益計算書作成の位置づけを確認しましょう。
決算手続きの流れ
① 決算整理仕訳 → ② 精算表の作成 → ③ 財務諸表の作成
↓
・損益計算書(このレッスン)
・貸借対照表
精算表の作成が完了したら、精算表の「損益計算書欄」の情報をもとに正式な損益計算書を作成します。
損益計算書作成の基本手順
損益計算書の作成は、以下の3つのステップで行います。
ステップ1: 精算表の損益計算書欄を確認する
精算表の「損益計算書欄」には、すべての収益勘定と費用勘定が集計されています。
【精算表の損益計算書欄(抜粋)】
勘定科目 損益計算書欄
借方 貸方
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
売上 8,000,000
仕入 4,500,000
給料 1,200,000
広告宣伝費 300,000
減価償却費 200,000
受取利息 50,000
支払利息 80,000
当期純利益 1,770,000
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
合計 8,050,000 8,050,000
ステップ2: 勘定科目を変更する
損益計算書では、一部の勘定科目をより適切な名称に変更する必要があります。
重要な変更ルール:
- 「仕入」 → 「売上原価」
- 「売上」 → 「売上高」
この変更は、売上原価の算定で学んだ決算整理仕訳により、仕入勘定が売上原価を表すようになっているためです。
ステップ3: 5つの利益を計算しながら損益計算書を作成する
精算表の情報を、5段階の利益計算形式に整理します。
損益計算書の構造と5つの利益
損益計算書は、**報告式(縦に並べる形式)**で作成し、5つの利益を段階的に計算します。
損益計算書の構造
【損益計算書の基本構造】
Ⅰ 売上高
Ⅱ 売上原価
━━━━━━━━━━━━━━━━
売上総利益(粗利)
Ⅲ 販売費及び一般管理費
━━━━━━━━━━━━━━━━
営業利益
Ⅳ 営業外収益
Ⅴ 営業外費用
━━━━━━━━━━━━━━━━
経常利益
Ⅵ 特別利益
Ⅶ 特別損失
━━━━━━━━━━━━━━━━
税引前当期純利益
Ⅷ 法人税等
━━━━━━━━━━━━━━━━
当期純利益
5つの利益の計算方法
① 売上総利益(粗利)
計算式:
売上総利益 = 売上高 - 売上原価
意味: 商品そのものがどれだけ利益を生み出しているか
表示例:
Ⅰ 売上高 8,000,000
Ⅱ 売上原価 4,500,000
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
売上総利益 3,500,000
売上総利益は「粗利(あらり)」とも呼ばれ、企業の商品力を示す重要な指標です。
② 営業利益
計算式:
営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費
意味: 本業でどれだけ稼いだかを示す最重要指標
販売費及び一般管理費に含まれる項目:
- 給料
- 広告宣伝費
- 旅費交通費
- 減価償却費
- 租税公課
- 水道光熱費
- 通信費
- 消耗品費
表示例:
売上総利益 3,500,000
Ⅲ 販売費及び一般管理費
給料 1,200,000
広告宣伝費 300,000
減価償却費 200,000
水道光熱費 150,000
その他 230,000 1,880,000
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
営業利益 1,620,000
営業利益がマイナスの場合、本業で赤字であることを意味し、経営上の大きな問題となります。
③ 経常利益
計算式:
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
意味: 経常的(繰り返し発生する)活動全体での利益
営業外収益・費用の例:
- 営業外収益: 受取利息、受取配当金、受取家賃
- 営業外費用: 支払利息、社債利息
表示例:
営業利益 1,620,000
Ⅳ 営業外収益
受取利息 50,000
受取配当金 30,000 80,000
Ⅴ 営業外費用
支払利息 80,000 80,000
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
経常利益 1,620,000
経常利益は、企業の総合的な収益力を最も正確に反映すると言われています。
④ 税引前当期純利益
計算式:
税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失
意味: 臨時的な損益も含めた、税金を引く前の利益
特別利益・損失の例:
- 特別利益: 固定資産売却益
- 特別損失: 固定資産売却損、火災損失
表示例:
経常利益 1,620,000
Ⅵ 特別利益
固定資産売却益 200,000 200,000
Ⅶ 特別損失
火災損失 50,000 50,000
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
税引前当期純利益 1,770,000
⑤ 当期純利益
計算式:
当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等
意味: 最終的に企業に残る利益(「最終利益」「純利益」)
表示例:
税引前当期純利益 1,770,000
Ⅷ 法人税等 531,000
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
当期純利益 1,239,000
当期純利益は、株主への配当や内部留保の原資となり、貸借対照表の作成において「繰越利益剰余金」に加算されます。
具体例:カフェの損益計算書を作成する
実際に精算表から損益計算書を作成してみましょう。
問題:精算表の損益計算書欄
【精算表の損益計算書欄】
勘定科目 損益計算書欄
借方 貸方
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
売上 8,000,000
仕入 4,500,000
給料 1,200,000
広告宣伝費 300,000
水道光熱費 150,000
減価償却費 200,000
消耗品費 80,000
旅費交通費 50,000
受取利息 50,000
受取配当金 30,000
支払利息 80,000
固定資産売却益 200,000
火災損失 50,000
法人税等 531,000
当期純利益 1,239,000
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
合計 8,280,000 8,280,000
解答:損益計算書
【損益計算書】
令和7年4月1日から令和8年3月31日まで
(単位:円)
Ⅰ 売上高 8,000,000
Ⅱ 売上原価 4,500,000
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
売上総利益 3,500,000
Ⅲ 販売費及び一般管理費
給料 1,200,000
広告宣伝費 300,000
水道光熱費 150,000
減価償却費 200,000
消耗品費 80,000
旅費交通費 50,000
───────
1,980,000
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
営業利益 1,520,000
Ⅳ 営業外収益
受取利息 50,000
受取配当金 30,000
───────
80,000
Ⅴ 営業外費用
支払利息 80,000 80,000
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
経常利益 1,520,000
Ⅵ 特別利益
固定資産売却益 200,000 200,000
Ⅶ 特別損失
火災損失 50,000 50,000
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
税引前当期純利益 1,670,000
Ⅷ 法人税等 531,000
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
当期純利益 1,139,000
※計算結果に若干の誤差がある場合は、精算表の数値を優先してください。
損益計算書作成の注意点
注意点1: 勘定科目の変更を忘れずに
精算表から転記する際、以下の変更は必須です。
| 精算表の科目 | 損益計算書の科目 |
|---|---|
| 売上 | 売上高 |
| 仕入 | 売上原価 |
この変更を忘れると減点されるため、必ず確認しましょう。
注意点2: 勘定科目の分類を正確に
各勘定科目を正しい区分に配置する必要があります。
- 売上原価: 仕入(決算整理後)
- 販売費及び一般管理費: 給料、広告宣伝費、減価償却費、水道光熱費など
- 営業外収益: 受取利息、受取配当金、受取家賃
- 営業外費用: 支払利息、社債利息
- 特別利益: 固定資産売却益
- 特別損失: 固定資産売却損、火災損失
注意点3: 当期純利益の位置
精算表の損益計算書欄では「当期純利益」が記載されていますが、正式な損益計算書では計算の結果として最下段に表示します。
注意点4: 借方・貸方の確認
精算表から転記する際、以下を確認しましょう。
- 借方: すべて費用
- 貸方: すべて収益
誤って逆に記載しないよう注意してください。
時間配分と解答のコツ
簿記3級試験の第3問で損益計算書作成問題が出題された場合のコツをまとめます。
時間配分
- 精算表作成: 20-25分
- 損益計算書作成: 5-8分
- 貸借対照表作成: 5-8分
損益計算書の作成は、精算表さえ正確に作成できていれば、転記作業がメインなので時間はかかりません。
解答の流れ
-
精算表の損益計算書欄を完成させる
- 決算整理仕訳をすべて反映させる
- 当期純利益を計算する
-
勘定科目を変更しながら転記する
- 「仕入」→「売上原価」
- 「売上」→「売上高」
-
5つの利益を計算しながら記入する
- 売上総利益
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
-
計算ミスがないか確認する
- 電卓で再計算する
- 貸借が一致しているか確認する
よくあるミスと対策
ミス1: 勘定科目の変更忘れ
対策: 転記する前に「仕入と売上はどうするか?」と自問自答する習慣をつける
ミス2: 販管費の勘定科目を営業外費用に含めてしまう
対策: 「給料、広告宣伝費、減価償却費」などは販管費、「支払利息」のみ営業外費用と覚える
ミス3: 当期純利益の計算ミス
対策: 精算表の当期純利益と損益計算書の当期純利益が一致するか必ず確認する
ミス4: 特別利益・損失の見落とし
対策: 「固定資産売却益・損」「火災損失」などの特別項目は目立つようにマークする
まとめ
このレッスンでは、精算表から損益計算書を作成する方法について学びました。
重要ポイント
- check_circle損益計算書は精算表の損益計算書欄からほぼそのまま転記する
- check_circle勘定科目の変更: 「仕入」→「売上原価」、「売上」→「売上高」
- check_circle5つの利益を段階的に計算: 売上総利益 → 営業利益 → 経常利益 → 税引前当期純利益 → 当期純利益
- check_circle営業利益が本業の収益力を示す最重要指標
- check_circle当期純利益は精算表の数値と一致するか必ず確認する
- check_circle損益計算書の作成は5-8分で完了させる(試験対策)
次のステップ
次のレッスンでは、貸借対照表の作成について学びます。損益計算書と合わせて、企業の財務状態と経営成績の全体像を把握できるようになります。