決算整理仕訳 signal_cellular_alt 難易度 3 schedule 40分

売上原価の算定 - しーくりくりしを理解しよう

決算整理における売上原価の算定方法を学びます。しーくりくりしの仕訳、期首商品棚卸高と期末商品棚卸高の処理、売上総利益の計算方法を理解します。

学習目標

  • check_circle売上原価の意味と計算式を理解する
  • check_circleしーくりくりしの仕訳ができる
  • check_circle期首商品棚卸高と期末商品棚卸高の処理を理解する
  • check_circle売上総利益を計算できる
  • check_circle損益計算書の売上原価欄を作成できる

売上原価とは何か

売上原価(うりあげげんか)とは、期中に実際に販売した商品の仕入原価のことです。英語では「Cost of Goods Sold」といい、略して「COGS」と表記されます。

商品売買取引の仕訳で学んだように、商品を仕入れたときは「仕入」勘定で記録しますが、決算時には実際に売れた商品の原価だけを費用として計上する必要があります。

売上原価が重要な理由

売上原価を正確に計算することで、企業が商品を販売してどれだけの利益を得たかが明らかになります。これは損益計算書(P/L)の中で最も重要な情報の1つです。

売上高 - 売上原価 = 売上総利益(粗利益)

売上総利益は「粗利(あらり)」とも呼ばれ、企業の基本的な収益力を示す指標です。


売上原価の計算式

売上原価は、以下の計算式で求められます。

基本計算式

売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高

各項目の意味

期首商品棚卸高(きしゅしょうひんたなおろしだか)

会計期間の最初の日に保有していた商品の金額

  • 前期から繰り越されてきた在庫
  • 前期の期末商品棚卸高と同じ金額
  • 勘定科目:「繰越商品

当期商品仕入高(とうきしょうひんしいれだか)

当期中に仕入れた商品の合計金額

  • 期中の仕入取引の合計
  • 勘定科目:「仕入

期末商品棚卸高(きまつしょうひんたなおろしだか)

会計期間の最終日に保有している商品の金額

  • 実地棚卸によって確認した在庫
  • 翌期に繰り越される商品
  • 勘定科目:「繰越商品

売上原価の計算イメージ

具体的な数字で考えてみましょう。

例:雑貨店の1年間

【状況】
期首商品棚卸高(前期からの在庫):50万円
当期商品仕入高(今期の仕入れ):300万円
期末商品棚卸高(期末の在庫):70万円

計算プロセス

① 期首に持っていた商品      50万円
② 当期に仕入れた商品      +300万円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
③ 販売可能だった商品合計   350万円
④ 期末に残っている商品     -70万円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
⑤ 実際に売れた商品の原価   280万円 ← これが売上原価

考え方のポイント

「期首にあった商品」と「当期に仕入れた商品」を合わせたものが、販売可能だった商品の総額です。

そこから「期末に残っている商品」を差し引けば、実際に売れた商品の原価が計算できます。


決算整理仕訳:しーくりくりし

売上原価を計算するために、決算時に特別な仕訳を行います。これが「しーくりくりし」と呼ばれる語呂合わせで有名な仕訳です。

しーくりくりしとは

ーくりくりし」は、以下の仕訳の頭文字を取ったものです。

「し」  → 仕入
「くり」 → 繰越商品(期首)
「くり」 → 繰越商品(期末)
「し」  → 仕入

2つの仕訳

売上原価の算定には、2つの仕訳が必要です。

第1仕訳:期首商品棚卸高の振替

目的: 前期から繰り越された商品(資産)を、当期の費用に振り替える

(借方)仕入    50万円  (貸方)繰越商品 50万円

意味: 期首にあった商品50万円を、今期の仕入(費用)に加える

第2仕訳:期末商品棚卸高の振替

目的: 期末に残っている商品を、費用から資産に振り替える

(借方)繰越商品  70万円  (貸方)仕入   70万円

意味: 期末に残った商品70万円を、仕入(費用)から除外し、資産に戻す


仕訳の流れを図解

仕訳前の状況

【繰越商品】(資産)       【仕入】(費用)
    50万円              300万円
  (期首在庫)          (当期仕入)

第1仕訳後の状況

仕入 50万円 / 繰越商品 50万円

【繰越商品】(資産)       【仕入】(費用)
    50万円 → 0円        300万円 + 50万円 = 350万円

繰越商品(期首)がゼロになり、仕入に移動しました。

第2仕訳後の状況

繰越商品 70万円 / 仕入 70万円

【繰越商品】(資産)       【仕入】(費用)
    0円 + 70万円 = 70万円  350万円 - 70万円 = 280万円
  (期末在庫)           (売上原価)

最終結果

  • 繰越商品: 70万円(期末在庫 = 資産)
  • 仕入: 280万円(売上原価 = 費用)

このようにして、「仕入」勘定が売上原価を表すようになります。


具体例:決算整理仕訳の完全版

前提条件

【雑貨店の1年間のデータ】
・期首商品棚卸高:80,000円(前期からの在庫)
・当期商品仕入高:500,000円(今期の仕入合計)
・期末商品棚卸高:100,000円(実地棚卸の結果)

決算整理仕訳

仕訳①:期首商品棚卸高の費用化

(借方)仕入    80,000円  (貸方)繰越商品 80,000円

説明: 期首にあった在庫80,000円を、今期の費用(仕入)に加えます。

仕訳②:期末商品棚卸高の資産化

(借方)繰越商品 100,000円  (貸方)仕入   100,000円

説明: 期末に残っている在庫100,000円を、費用から除外して資産に戻します。

売上原価の確認

仕入勘定の残高 = 売上原価
= 当期仕入高 + 期首商品棚卸高 - 期末商品棚卸高
= 500,000円 + 80,000円 - 100,000円
= 480,000円

勘定記入(T勘定)で確認

繰越商品勘定

【繰越商品】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
期首残高  80,000 | 仕入振替  80,000
                | (第1仕訳)
仕入振替 100,000 |
(第2仕訳)      |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
期末残高 100,000 |

期首残高80,000円が仕入に振り替えられ、期末残高100,000円が新たに計上されています。

仕入勘定

【仕入】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
当期仕入  500,000 | 繰越商品  100,000
                  | (第2仕訳)
繰越商品   80,000 | 損益      480,000
(第1仕訳)       |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
合計      580,000 | 合計      580,000

仕入勘定の残高480,000円が売上原価として損益計算書に表示されます。


売上総利益の計算

売上原価が確定したら、売上総利益を計算できます。

売上総利益の計算式

売上総利益 = 売上高 - 売上原価

【前提】
売上高:800,000円
売上原価:480,000円(上記で計算)

【計算】
売上総利益 = 800,000円 - 480,000円 = 320,000円

売上総利益率(粗利率)

売上総利益率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100

= 320,000円 ÷ 800,000円 × 100
= 40%

粗利率40%というのは、商品を100円で売ったら、40円の粗利が出るという意味です。


損益計算書での表示

売上原価は、損益計算書の中で以下のように表示されます。

【損益計算書(部分)】

売上高                           800,000円

売上原価
 期首商品棚卸高     80,000円
 当期商品仕入高    500,000円
          ─────────
  合計           580,000円
 期末商品棚卸高   100,000円
          ─────────
 売上原価                      480,000円
                              ─────────
売上総利益                      320,000円

この表示方法により、売上原価の内訳が明確になります。


よくある間違い

間違い1: 仕訳の順序を逆にする

間違った仕訳

第1仕訳: 繰越商品 70万円 / 仕入 70万円  (これは第2仕訳)
第2仕訳: 仕入 50万円 / 繰越商品 50万円  (これは第1仕訳)

正しい仕訳

第1仕訳: 仕入 50万円 / 繰越商品 50万円  (期首を先に)
第2仕訳: 繰越商品 70万円 / 仕入 70万円  (期末を後に)

覚え方: 「しー(仕入)くり(繰越商品)」「くり(繰越商品)し(仕入)」の順番

間違い2: 期首と期末の金額を混同する

期首商品棚卸高と期末商品棚卸高は、異なる金額です。問題文をよく読んで、正確に仕訳しましょう。

間違い3: 計算式を間違える

間違った計算

売上原価 = 当期仕入高 + 期末商品棚卸高 - 期首商品棚卸高

正しい計算

売上原価 = 当期仕入高 + 期首商品棚卸高 - 期末商品棚卸高

「期首を足して、期末を引く」と覚えましょう。


実地棚卸の重要性

期末商品棚卸高は、**実地棚卸(じっちたなおろし)**によって確認します。

実地棚卸とは

倉庫や店舗にある商品を実際に数えて、在庫の数量と金額を確認すること

実地棚卸の流れ

  1. 棚卸日の決定: 通常は決算日に実施
  2. 商品の数量確認: すべての商品を数える
  3. 金額の計算: 数量 × 単価で在庫金額を算出
  4. 帳簿残高との照合: 帳簿の繰越商品と実際の在庫を比較
  5. 差異の調査: 不一致があれば原因を調査

実地棚卸で見つかる問題

  • 商品の紛失: 盗難や破損で商品が減っている
  • 記帳ミス: 仕入や売上の記録が間違っている
  • 返品の処理漏れ: 返品の記録が抜けている

これらの差異は、現金過不足の整理と同様に、原因を調査して適切に処理する必要があります。


試験での出題パターン

パターン1: 決算整理仕訳を答える問題

【問題】
期首商品棚卸高:60,000円
期末商品棚卸高:80,000円
決算整理仕訳を示しなさい。

解答

(借方)仕入    60,000円  (貸方)繰越商品 60,000円
(借方)繰越商品  80,000円  (貸方)仕入   80,000円

パターン2: 売上原価を計算する問題

【問題】
期首商品棚卸高:100,000円
当期商品仕入高:600,000円
期末商品棚卸高:120,000円
売上原価を計算しなさい。

解答

売上原価 = 100,000円 + 600,000円 - 120,000円 = 580,000円

パターン3: 損益計算書の作成

精算表の作成損益計算書の作成の問題で、売上原価の算定が含まれます。


売上原価算定の意義

1. 正確な利益計算

売上原価を正確に計算することで、企業の本当の利益が分かります。

2. 在庫管理の重要性

期末商品棚卸高は、在庫管理の状況を示します。在庫が多すぎると、以下の問題が発生します。

  • 資金の固定化: 売れない商品にお金が使われている
  • 保管コストの増加: 倉庫代や管理費がかかる
  • 商品価値の低下: 古くなった商品は売れにくい

3. 経営判断への活用

売上総利益率(粗利率)を見ることで、商品の価格設定や仕入先の選定などの経営判断ができます。


関連する会計処理

商品有高帳との関係

商品有高帳では、商品の入出庫と在庫残高を記録します。期末商品棚卸高は、商品有高帳の残高と一致するはずです。

他の決算整理仕訳との関係

売上原価の算定は、決算整理の中で最も重要な項目の1つです。減価償却貸倒引当金とともに、正確な利益計算のために必要不可欠です。


まとめ

このレッスンでは、売上原価の算定方法について学びました。

重要ポイント

  • check_circle売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
  • check_circleしーくりくりし:「仕入/繰越商品」「繰越商品/仕入」の2つの仕訳
  • check_circle第1仕訳で期首在庫を費用化、第2仕訳で期末在庫を資産化
  • check_circle仕訳後の「仕入」勘定の残高が売上原価になる
  • check_circle売上総利益 = 売上高 - 売上原価
  • check_circle期末商品棚卸高は実地棚卸によって確認する
  • check_circle簿記3級試験で頻出の重要論点

次のステップ

次のレッスンでは、減価償却について学びます。固定資産の価値の減少を費用として計上する重要な決算整理仕訳です。