減価償却 - 固定資産の価値減少を記録しよう
減価償却の基本的な考え方、定額法による計算方法、直接法と間接法の仕訳について学びます。固定資産の価値減少を正しく記録する方法を理解しましょう。
学習目標
- check_circle減価償却の意味と目的を説明できる
- check_circle定額法による減価償却費を計算できる
- check_circle直接法による減価償却の仕訳ができる
- check_circle間接法による減価償却の仕訳ができる
- check_circle固定資産の期中取得時の月割計算ができる
減価償却とは何か
**減価償却(げんかしょうきゃく)**とは、固定資産が時間の経過とともに価値が減少していくことを、会計上の記録として反映させる手続きのことです。
減価償却の意味
建物、備品、車両運搬具などの固定資産は、使用するにつれて物理的に劣化し、また技術の進歩により経済的価値が下がっていきます。
具体例:
- 車両: 新車で購入した時は300万円だが、5年後には100万円の価値になる
- パソコン: 購入時は20万円だが、3年後には性能が古くなり5万円の価値しかない
- 建物: 築年数が経過するごとに価値が減少する
このような価値の減少を**「減価」と呼び、その減価を会計上の費用として計上する手続きを「減価償却」**と言います。
減価償却の目的
減価償却には、以下の2つの重要な目的があります。
1. 適正な期間損益計算
固定資産は通常、何年にもわたって使用され、その間に収益を生み出します。
費用収益対応の原則:
- 固定資産の取得原価を、使用する期間に配分して費用化する
- 各会計期間の利益を正確に計算する
悪い例(減価償却をしない場合):
車両300万円を購入した年だけ、費用が300万円計上される
→ その年だけ赤字、翌年以降は黒字(実態を反映していない)
良い例(減価償却をする場合):
車両300万円を5年で償却
→ 毎年60万円ずつ費用計上(収益と費用が対応)
2. 貸借対照表の適正な表示
貸借対照表(B/S)に記載される固定資産の金額を、現在の価値に近づけるためです。
減価償却の対象となる資産
償却対象の有形固定資産
以下の固定資産は、時間の経過とともに価値が減少するため、減価償却の対象となります。
主な償却対象資産:
- 建物: 事務所、店舗、工場
- 備品: 机、椅子、パソコン、エアコン
- 車両運搬具: 営業車、トラック
- 機械装置: 製造設備
- ソフトウェア: 業務用ソフトウェア(無形固定資産)
償却対象外の資産
土地は時間が経過しても価値が減少しないため、減価償却の対象外です。
理由:
- 土地は使用しても劣化しない
- むしろ時間の経過とともに価値が上がることもある
減価償却の方法
減価償却の計算方法には、主に2つの方法があります。
定額法(ていがくほう)
毎期同じ金額を償却する方法
簿記3級では、定額法のみが出題範囲です。
定率法(ていりつほう)
毎期一定の割合で償却する方法(簿記2級以降で学習)
初年度の償却額が大きく、年々減少していきます。
定額法による減価償却費の計算
定額法では、取得原価から残存価額を差し引いた金額を、耐用年数で均等に配分します。
計算式
減価償却費 = (取得原価 - 残存価額) ÷ 耐用年数
用語の説明
取得原価(しゅとくげんか)
固定資産を取得した時にかかった費用の総額です。
含まれるもの:
- 購入代金
- 運送費
- 設置費用
- 手数料
例: 機械の購入代金500万円 + 運送費10万円 + 設置費用20万円 = 取得原価530万円
耐用年数(たいようねんすう)
固定資産を使用できる年数のことです。
法律(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)で、資産の種類ごとに定められています。
主な耐用年数:
- 建物(木造): 22年
- 建物(鉄筋コンクリート): 47年
- 車両運搬具(普通乗用車): 6年
- 備品(パソコン): 4年
- 備品(机・椅子): 8年
残存価額(ざんぞんかがく)
耐用年数が経過した後に残っている価値のことです。
2007年(平成19年)の税制改正により、現在の減価償却では、残存価額は実質的にゼロとして計算します(最終的に帳簿価額1円まで償却)。
しかし、簿記3級の試験では、問題文で残存価額が指定されることがあります。
減価償却費の計算例
例1: 基本的な計算
問題: 以下の備品について、1年分の減価償却費を計算しなさい。
- 取得原価: 500,000円
- 残存価額: 取得原価の10%
- 耐用年数: 5年
解答:
ステップ1: 残存価額を計算
残存価額 = 500,000円 × 10% = 50,000円
ステップ2: 減価償却費を計算
減価償却費 = (500,000円 - 50,000円) ÷ 5年
= 450,000円 ÷ 5年
= 90,000円
答え: 年間の減価償却費は90,000円
例2: 残存価額ゼロの計算
問題: 車両運搬具1,800,000円を購入した。耐用年数6年、残存価額ゼロとして、1年分の減価償却費を計算しなさい。
解答:
減価償却費 = (1,800,000円 - 0円) ÷ 6年
= 1,800,000円 ÷ 6年
= 300,000円
答え: 年間の減価償却費は300,000円
減価償却の記帳方法
決算整理で減価償却費を計上する際、記帳方法には直接法と間接法の2つがあります。
直接法と間接法の違い
| 項目 | 直接法 | 間接法 |
|---|---|---|
| 貸方科目 | 固定資産 | 減価償却累計額 |
| 固定資産の表示 | 減額後の価値 | 取得原価のまま |
| 簿記3級 | 出題される | よく出題される |
| 実務 | あまり使われない | 一般的 |
直接法による減価償却
直接法は、減価償却費を固定資産から直接差し引く方法です。
直接法の仕訳
例: 備品(取得原価500,000円)について、減価償却費90,000円を計上する
仕訳:
借方:減価償却費 90,000 / 貸方:備品 90,000
貸借対照表での表示(直接法)
【貸借対照表】(1年後)
資産の部
[固定資産]
備品 410,000円(500,000円 - 90,000円)
直接法のメリット・デメリット
メリット:
- 現在の帳簿価額(価値)が一目で分かる
デメリット:
- 取得原価がいくらだったか分からなくなる
- これまでいくら償却したか分からない
間接法による減価償却
間接法は、固定資産の金額を減らさずに、**「減価償却累計額」**という勘定科目を使う方法です。
間接法の仕訳
例: 備品(取得原価500,000円)について、減価償却費90,000円を計上する
仕訳:
借方:減価償却費 90,000 / 貸方:備品減価償却累計額 90,000
減価償却累計額とは
**減価償却累計額(げんかしょうきゃくるいけいがく)**は、これまでに計上した減価償却費の累計額を表す勘定科目です。
- 勘定科目の性質: 資産のマイナス(資産の控除項目)
- 貸借対照表: 資産の部の「固定資産」からマイナス表示
貸借対照表での表示(間接法)
【貸借対照表】(1年後)
資産の部
[固定資産]
備品 500,000円
備品減価償却累計額 △90,000円
―――――――――――――――――――
備品(純額) 410,000円
2年後(減価償却費を2年分計上した場合):
【貸借対照表】(2年後)
資産の部
[固定資産]
備品 500,000円
備品減価償却累計額 △180,000円(90,000円 × 2年)
―――――――――――――――――――
備品(純額) 320,000円
間接法のメリット・デメリット
メリット:
- 取得原価が分かる(500,000円)
- これまでの償却額が分かる(180,000円)
- 現在の帳簿価額も計算できる(500,000円 - 180,000円 = 320,000円)
- 実務でよく使われる
デメリット:
- 仕訳の科目がやや複雑
簿記3級では間接法が中心
簿記3級の試験では、間接法での出題が中心です。直接法も理解しておく必要がありますが、間接法をしっかりマスターしましょう。
固定資産の期中取得時の減価償却
固定資産を期首ではなく、期中(年度の途中)に取得した場合、減価償却費は月割計算します。
月割計算の考え方
原則:
- 1年分の減価償却費を計算
- 実際に使用した月数で按分
計算式
減価償却費 = 1年分の減価償却費 × 使用月数 ÷ 12か月
月割計算の具体例
例: 期中取得のケース
問題: ×1年7月1日に、車両運搬具1,800,000円を購入した。決算日は×2年3月31日(会計期間1年)。耐用年数6年、残存価額ゼロとして、当期の減価償却費を計算しなさい。
解答:
ステップ1: 1年分の減価償却費を計算
1年分の減価償却費 = 1,800,000円 ÷ 6年 = 300,000円
ステップ2: 使用月数を確認
×1年7月1日 〜 ×2年3月31日 = 9か月
ステップ3: 月割計算
当期の減価償却費 = 300,000円 × 9か月 ÷ 12か月
= 300,000円 × 9/12
= 225,000円
仕訳(間接法):
借方:減価償却費 225,000 / 貸方:車両運搬具減価償却累計額 225,000
月数の端数処理
試験問題では、通常1か月未満の端数は切り捨てまたは切り上げの指示があります。指示に従って計算しましょう。
減価償却と財務諸表の関係
減価償却は、損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の両方に影響を与えます。
損益計算書への影響
減価償却費は、販売費及び一般管理費として計上されます。
【損益計算書】
売上高 1,000,000円
売上原価 600,000円
―――――――――――――――――――――――
売上総利益 400,000円
販売費及び一般管理費
給料 150,000円
減価償却費 90,000円 ← ここに計上
その他 60,000円
―――――――――――――――――――――――
営業利益 100,000円
貸借対照表への影響
固定資産の帳簿価額が減少します(間接法の場合、減価償却累計額が増加)。
【貸借対照表】
資産の部
[固定資産]
備品 500,000円
備品減価償却累計額 △90,000円
―――――――――――――――――――――
備品(純額) 410,000円
減価償却のポイント
ポイント1: 毎期継続して計上
減価償却は、固定資産を使用している限り、毎期継続して計上する必要があります。
ポイント2: 最終年度は残高を確認
定額法では、最終的に帳簿価額が1円になるまで償却します(備忘価額)。
理由: 固定資産がまだ存在していることを示すため
ポイント3: 土地は償却しない
繰り返しになりますが、土地は減価償却の対象外です。試験で間違えやすいポイントなので注意しましょう。
ポイント4: 簿記3級は間接法が中心
試験では間接法での出題が多いため、「減価償却累計額」の仕訳をマスターしましょう。
まとめ
このレッスンでは、決算整理で必須となる減価償却について学びました。
重要ポイント
- check_circle減価償却とは、固定資産の価値減少を費用化する手続き
- check_circle定額法の計算式: 減価償却費 = (取得原価 - 残存価額) ÷ 耐用年数
- check_circle直接法: 固定資産を直接減額する方法
- check_circle間接法: 減価償却累計額を使う方法(簿記3級の中心)
- check_circle間接法の仕訳: 減価償却費 / 備品減価償却累計額
- check_circle期中取得の場合は月割計算が必要
- check_circle土地は減価償却の対象外
次のステップ
次のレッスンでは、貸倒引当金の設定について学びます。売掛金などの回収不能リスクに備えるための決算整理仕訳を理解しましょう。