仕訳の基礎 signal_cellular_alt 難易度 2 schedule 45分

その他の債権・債務の仕訳 - 貸付金・未収入金・前払金などの処理方法

貸付金・借入金、未収入金・未払金、前払金・前受金、仮払金・仮受金、立替金・預り金の仕訳について学びます。売掛金・買掛金以外の債権・債務を正確に処理できるようになりましょう。

学習目標

  • check_circle貸付金・借入金の仕訳ができる
  • check_circle未収入金・未払金と売掛金・買掛金の違いを理解し、使い分けられる
  • check_circle前払金・前受金の仕訳ができる
  • check_circle仮払金・仮受金の処理方法を理解する
  • check_circle立替金・預り金の仕訳ができる
  • check_circle10種類の勘定科目を正確に使い分けられる

その他の債権・債務とは

これまでに商品売買取引売掛金・買掛金手形取引受取手形・支払手形を学習しました。

しかし、企業の取引には商品売買以外の債権・債務も数多く存在します。このレッスンでは、簿記3級で頻出する10種類の債権・債務の勘定科目を学習します。

債権・債務の全体像

債権(さいけん): 相手からお金を受け取る権利(資産) 債務(さいむ): 相手にお金を支払う義務(負債)

債権(資産)債務(負債)用途
売掛金買掛金商品の掛取引
受取手形支払手形手形での取引
貸付金借入金金銭の貸し借り
未収入金未払金商品以外の後払い
前払金前受金前払い・前受け
仮払金仮受金一時的な処理
立替金預り金立替え・預かり

貸付金と借入金

貸付金とは

貸付金(かしつけきん)とは、他者にお金を貸し付けた際に使用する勘定科目で、資産に分類されます。貸付金には利息が発生することが一般的です。

借入金とは

借入金(かりいれきん)とは、他者からお金を借り入れた際に使用する勘定科目で、負債に分類されます。返済義務があり、利息を支払うことが一般的です。

貸付金の仕訳

例1: 他社に現金を貸し付けた

取引: A社に現金100万円を貸し付けた

借方:貸付金 1,000,000 / 貸方:現金 1,000,000

考え方:

  • 貸付金(資産)が増加 → 借方
  • 現金(資産)が減少 → 貸方

例2: 利息とともに返済を受けた

取引: 貸し付けていた100万円が、利息2万円とともに当座預金に振り込まれた

借方:当座預金 1,020,000 / 貸方:貸付金 1,000,000
                           /     受取利息  20,000

考え方:

  • 当座預金(資産)が増加 → 借方(1,020,000円)
  • 貸付金(資産)が減少 → 貸方(1,000,000円)
  • 受取利息(収益)が発生 → 貸方(20,000円)

借入金の仕訳

例3: 銀行から借入をした

取引: 銀行から500万円を借り入れ、当座預金に入金された

借方:当座預金 5,000,000 / 貸方:借入金 5,000,000

考え方:

  • 当座預金(資産)が増加 → 借方
  • 借入金(負債)が増加 → 貸方

例4: 利息とともに返済した

取引: 借入金500万円を利息10万円とともに、当座預金から返済した

借方:借入金 5,000,000 / 貸方:当座預金 5,100,000
      支払利息  100,000

考え方:

  • 借入金(負債)が減少 → 借方(5,000,000円)
  • 支払利息(費用)が発生 → 借方(100,000円)
  • 当座預金(資産)が減少 → 貸方(5,100,000円)

利息の計算方法

利息は以下の計算式で求めます。

月割計算

利息 = 貸付金額(借入金額) × 年利率 × 月数 ÷ 12

: 100万円を年利率3%で6ヶ月間貸し付けた場合

利息 = 1,000,000円 × 0.03 × 6 ÷ 12 = 15,000円

日割計算

利息 = 貸付金額(借入金額) × 年利率 × 日数 ÷ 365

: 100万円を年利率3%で60日間貸し付けた場合

利息 = 1,000,000円 × 0.03 × 60 ÷ 365 = 4,932円

未収入金と未払金

未収入金とは

**未収入金(みしゅうにゅうきん)**とは、商品以外のものを売却し、代金を後で受け取る権利を表す勘定科目です。資産に分類されます。

未払金とは

**未払金(みばらいきん)**とは、商品以外のものを購入し、代金を後で支払う義務を表す勘定科目です。負債に分類されます。

売掛金・買掛金との違い

勘定科目用途分類
売掛金商品を掛けで販売資産
未収入金商品以外を掛けで売却資産
買掛金商品を掛けで仕入負債
未払金商品以外を掛けで購入負債

覚え方:

  • 「商品」の掛取引 → 売掛金・買掛金
  • 「商品以外」の掛取引 → 未収入金・未払金

未収入金の仕訳

例5: 固定資産を後払いで売却した

取引: 備品(帳簿価額20万円)を25万円で売却し、代金は来月受け取ることにした

借方:未収入金 250,000 / 貸方:備品 200,000
                       /     固定資産売却益 50,000

考え方:

  • 未収入金(資産)が増加 → 借方
  • 備品(資産)が減少 → 貸方
  • 固定資産売却益(収益)が発生 → 貸方

例6: 未収入金を回収した

取引: 未収入金25万円が普通預金に振り込まれた

借方:普通預金 250,000 / 貸方:未収入金 250,000

未払金の仕訳

例7: 備品を後払いで購入した

取引: パソコン15万円を購入し、代金は来月支払うことにした

借方:備品 150,000 / 貸方:未払金 150,000

考え方:

  • 備品(資産)が増加 → 借方
  • 未払金(負債)が増加 → 貸方

例8: 未払金を支払った

取引: 未払金15万円を現金で支払った

借方:未払金 150,000 / 貸方:現金 150,000

前払金と前受金

前払金とは

**前払金(まえばらいきん)**とは、商品や固定資産の購入時に、代金の一部または全部を事前に支払った場合に使用する勘定科目です。資産に分類されます。

別名「前渡金(まえわたしきん)」とも呼ばれます。

前受金とは

**前受金(まえうけきん)**とは、商品や固定資産の売却時に、代金の一部または全部を事前に受け取った場合に使用する勘定科目です。負債に分類されます。


前払金の仕訳

例9: 内金を支払った

取引: 備品30万円を注文し、内金として10万円を現金で支払った

借方:前払金 100,000 / 貸方:現金 100,000

考え方:

  • 前払金(資産)が増加 → 借方
  • 現金(資産)が減少 → 貸方

例10: 残金を支払って納品を受けた

取引: 注文していた備品30万円が納品され、残金20万円を現金で支払った

借方:備品 300,000 / 貸方:前払金 100,000
                   /     現金   200,000

考え方:

  • 備品(資産)が増加 → 借方(300,000円)
  • 前払金(資産)が減少 → 貸方(100,000円)
  • 現金(資産)が減少 → 貸方(200,000円)

前受金の仕訳

例11: 手付金を受け取った

取引: 商品50万円を注文され、手付金として15万円を現金で受け取った

借方:現金 150,000 / 貸方:前受金 150,000

考え方:

  • 現金(資産)が増加 → 借方
  • 前受金(負債)が増加 → 貸方

例12: 残金を受け取って商品を引き渡した

取引: 注文されていた商品50万円を引き渡し、残金35万円を現金で受け取った

借方:前受金 150,000 / 貸方:売上 500,000
      現金   350,000

考え方:

  • 前受金(負債)が減少 → 借方(150,000円)
  • 現金(資産)が増加 → 借方(350,000円)
  • 売上(収益)が発生 → 貸方(500,000円)

仮払金と仮受金

仮払金とは

**仮払金(かりばらいきん)**とは、支払時点で用途や金額が確定していない場合に、一時的に使用する勘定科目です。資産に分類されます。

使用例:

  • 出張前に従業員に概算額を渡す
  • 急な支払いで用途が不明
  • 金額が未確定

仮受金とは

**仮受金(かりうけきん)**とは、入金時点で内容や金額が不明な場合に、一時的に使用する勘定科目です。負債に分類されます。

使用例:

  • 当座預金に不明な入金があった
  • 誰からの入金か不明
  • 何の入金か不明

仮払金の仕訳

例13: 出張前に概算額を渡した

取引: 従業員が出張するため、概算として5万円を現金で渡した

借方:仮払金 50,000 / 貸方:現金 50,000

考え方:

  • 仮払金(資産)が増加 → 借方
  • 現金(資産)が減少 → 貸方

例14: 精算を受けて実際の費用が判明した

取引: 従業員が出張から戻り、以下の報告を受けた

  • 旅費交通費: 3万円
  • 接待費: 1万5千円
  • 残金: 5千円を現金で返金された
借方:旅費交通費 30,000 / 貸方:仮払金 50,000
      交際費    15,000
      現金      5,000

考え方:

  • 旅費交通費(費用)が発生 → 借方(30,000円)
  • 交際費(費用)が発生 → 借方(15,000円)
  • 現金(資産)が増加 → 借方(5,000円)
  • 仮払金(資産)が減少 → 貸方(50,000円)

仮受金の仕訳

例15: 不明な入金があった

取引: 当座預金に8万円の入金があったが、内容が不明である

借方:当座預金 80,000 / 貸方:仮受金 80,000

考え方:

  • 当座預金(資産)が増加 → 借方
  • 仮受金(負債)が増加 → 貸方

例16: 内容が判明した

取引: 取引先に確認したところ、売掛金の回収であることが判明した

借方:仮受金 80,000 / 貸方:売掛金 80,000

考え方:

  • 仮受金(負債)が減少 → 借方
  • 売掛金(資産)が減少 → 貸方

立替金と預り金

立替金とは

立替金(たてかえきん)とは、従業員や取引先が本来負担すべき費用を、会社が一時的に立て替えて支払った場合に使用する勘定科目です。資産に分類されます。

預り金とは

預り金(あずかりきん)とは、従業員や取引先から一時的にお金を預かった場合に使用する勘定科目です。負債に分類されます。

主な使用例:

  • 源泉所得税: 従業員の給料から天引きし、後で税務署に納付
  • 社会保険料: 従業員の給料から天引きし、後で年金事務所に納付
  • 住民税: 従業員の給料から天引きし、後で市町村に納付

立替金の仕訳

例17: 従業員の経費を立て替えた

取引: 従業員の出張費用2万円を、会社が現金で立て替えて支払った

借方:立替金 20,000 / 貸方:現金 20,000

考え方:

  • 立替金(資産)が増加 → 借方
  • 現金(資産)が減少 → 貸方

例18: 立替金を回収した

取引: 従業員から立替金2万円を現金で回収した

借方:現金 20,000 / 貸方:立替金 20,000

預り金の仕訳

例19: 給料から源泉所得税を天引きした

取引: 従業員に給料30万円を支払ったが、源泉所得税2万円を天引きし、残額28万円を現金で支払った

借方:給料 300,000 / 貸方:現金   280,000
                    /     預り金   20,000

考え方:

  • 給料(費用)が発生 → 借方(300,000円)
  • 現金(資産)が減少 → 貸方(280,000円)
  • 預り金(負債)が増加 → 貸方(20,000円)

例20: 預かった源泉所得税を納付した

取引: 預かっていた源泉所得税2万円を現金で税務署に納付した

借方:預り金 20,000 / 貸方:現金 20,000

考え方:

  • 預り金(負債)が減少 → 借方
  • 現金(資産)が減少 → 貸方

勘定科目の使い分けまとめ

債権(資産)の使い分け

勘定科目用途具体例
売掛金商品を掛けで販売商品を後払いで売った
受取手形手形で代金を受け取る手形で代金を受け取った
貸付金お金を貸し付けた他社にお金を貸した
未収入金商品以外を掛けで売却備品を後払いで売った
前払金事前に代金を支払った内金・手付金を払った
仮払金用途不明で支払った出張前に概算額を渡した
立替金他者の分を立て替えた従業員の経費を立て替えた

債務(負債)の使い分け

勘定科目用途具体例
買掛金商品を掛けで仕入商品を後払いで買った
支払手形手形で代金を支払う手形で代金を支払った
借入金お金を借りた銀行から借り入れた
未払金商品以外を掛けで購入備品を後払いで買った
前受金事前に代金を受け取った内金・手付金を受け取った
仮受金内容不明で受け取った不明な入金があった
預り金他者の分を預かった源泉所得税を天引きした

よくある間違いと注意点

間違い1: 商品以外の取引で売掛金・買掛金を使う

❌ 間違い: 備品を後払いで購入 → 買掛金を使う ✅ 正解: 備品を後払いで購入 → 未払金を使う

商品売買取引で使う売掛金・買掛金は、あくまで商品の掛取引のみに使用します。


間違い2: 前払金と仮払金の混同

前払金: 購入するもの(商品、固定資産)が決まっている 仮払金: 用途が不明・未確定

: 商品50万円を注文し、内金10万円を払った

  • ✅ 前払金(商品が決まっている)
  • ❌ 仮払金(用途が決まっているので不適切)

間違い3: 決算時に仮払金・仮受金が残っている

仮払金・仮受金は一時的な勘定科目です。決算時までに必ず精算し、正しい勘定科目に振り替える必要があります。


実務での活用例

ケース1: 固定資産の売却

古くなった車両(帳簿価額80万円)を100万円で売却し、代金は来月受け取る

借方:未収入金 1,000,000 / 貸方:車両運搬具 800,000
                          /     固定資産売却益 200,000

固定資産の取得と売却の学習でより詳しく理解できます。


ケース2: 給料の支払いと社会保険料

従業員に給料50万円を支払い、社会保険料5万円、源泉所得税3万円を天引きし、残額42万円を当座預金から振り込んだ

借方:給料 500,000 / 貸方:当座預金 420,000
                    /     預り金(社保) 50,000
                    /     預り金(税) 30,000

ケース3: 決算時の経過勘定

前払金・前受金と似た勘定科目として、経過勘定(前払費用・前受収益など)があります。これらは決算整理で使用する勘定科目で、期中には登場しません。

違い:

  • 前払金: 特定の商品や固定資産の購入時に使用(期中)
  • 前払費用: サービス(保険料、家賃など)の期間按分で使用(決算時)

まとめ

このレッスンでは、その他の債権・債務の10種類の勘定科目について学びました。

重要ポイント

  • check_circle貸付金・借入金: 金銭の貸し借りに使用(利息が発生)
  • check_circle未収入金・未払金: 商品以外の後払い取引に使用
  • check_circle前払金・前受金: 内金・手付金などの前払い・前受けに使用
  • check_circle仮払金・仮受金: 用途不明な一時的な支払い・受け取りに使用(決算までに精算)
  • check_circle立替金・預り金: 他者の分を立て替えた・預かった場合に使用
  • check_circle商品の取引は売掛金・買掛金、商品以外は未収入金・未払金
  • check_circle利息の計算: 元金 × 年利率 × 期間(月数÷12 or 日数÷365)

次のステップ

次のレッスンでは、固定資産の取得と売却について学びます。建物、備品、車両運搬具などの固定資産の取得時・売却時の仕訳をマスターしましょう。未収入金が固定資産売却で再び登場します。