固定資産の取得と売却 - 建物・備品・車両の仕訳をマスターしよう
固定資産の取得時・売却時の仕訳方法、付随費用の処理、固定資産売却損益の計算について学びます。建物、備品、車両運搬具などの固定資産取引を正確に記録できるようになりましょう。
学習目標
- check_circle固定資産の定義と種類を説明できる
- check_circle固定資産の取得時の仕訳ができる
- check_circle付随費用を取得原価に含めて計算できる
- check_circle固定資産の売却時の仕訳ができる
- check_circle固定資産売却損益を計算できる
固定資産とは
固定資産(こていしさん)とは、企業が1年を超えて長期間使用する目的で保有する資産のことです。貸借対照表(B/S)の資産の部に計上され、事業活動を支える重要な財産です。
流動資産との違い
貸借対照表で学んだように、資産は「流動資産」と「固定資産」に分類されます。
| 項目 | 流動資産 | 固定資産 |
|---|---|---|
| 保有期間 | 1年以内 | 1年超 |
| 目的 | 販売・換金 | 長期使用 |
| 具体例 | 現金、商品、売掛金 | 建物、備品、車両 |
固定資産の3つの分類
固定資産は、その性質によって3つに分類されます。
1. 有形固定資産
形があって目に見える固定資産
簿記3級で主に出題される有形固定資産は以下の4つです:
- 建物: 事務所、店舗、倉庫など
- 備品: パソコン、机、椅子、応接セット、エアコンなど
- 車両運搬具: 営業車、トラック、バイクなど
- 土地: 所有している土地
2. 無形固定資産
形がなく、目に見えない権利やソフトウェア
- 特許権、商標権、ソフトウェアなど
3. 投資その他の資産
長期的な投資目的で保有するもの
- 投資有価証券、長期貸付金など
簿記3級では、主に有形固定資産の取引を学習します。
固定資産の取得
固定資産を購入したときは、取得原価で資産計上します。
取得原価とは
取得原価(しゅとくげんか)とは、固定資産を取得するために直接支払った金額のことです。
取得原価 = 購入代金 + 付随費用
付随費用とは
付随費用(ふずいひよう)とは、固定資産を取得する際に関連して発生した諸経費のことです。
取得原価に含める付随費用の例
建物の場合:
- 仲介手数料
- 登記費用(登録免許税)
- 不動産取得税(任意)
備品の場合:
- 引取運賃(運送費)
- 据付費(設置費用)
- 購入手数料
車両運搬具の場合:
- 納車費用
- 自動車税(初年度)
- カーナビなどの付属品
重要: 付随費用は、購入代金とは別の勘定科目を使わず、固定資産の取得原価に含めて計上します。
固定資産の取得時の仕訳
固定資産を取得したときは、以下のように仕訳します。
基本の仕訳パターン
(借方) 固定資産 ××× / (貸方) 現金・当座預金など ×××
固定資産(資産)が増加するため、借方に記入します。
例1: 建物を現金で購入
取引: 事務所として使用する建物を2,000万円で購入し、仲介手数料50万円とともに現金で支払った。
考え方:
- 建物(資産)が増加 → 借方
- 取得原価 = 購入代金2,000万円 + 仲介手数料50万円 = 2,050万円
- 現金(資産)が減少 → 貸方
仕訳:
(借方) 建物 20,500,000 / (貸方) 現金 20,500,000
ポイント: 仲介手数料も建物の取得原価に含めます。
例2: 備品を現金で購入
取引: パソコン20万円を購入し、配送料5,000円とともに現金で支払った。
考え方:
- 備品(資産)が増加 → 借方
- 取得原価 = 本体価格20万円 + 配送料5,000円 = 205,000円
- 現金(資産)が減少 → 貸方
仕訳:
(借方) 備品 205,000 / (貸方) 現金 205,000
例3: 車両を当座預金で購入
取引: 営業用の車両150万円を購入し、納車費用2万円とともに当座預金から支払った。
考え方:
- 車両運搬具(資産)が増加 → 借方
- 取得原価 = 車両本体150万円 + 納車費用2万円 = 152万円
- 当座預金(資産)が減少 → 貸方
仕訳:
(借方) 車両運搬具 1,520,000 / (貸方) 当座預金 1,520,000
例4: 備品を掛けで購入
取引: 応接セット30万円を購入し、代金は掛けとした。
考え方:
- 備品(資産)が増加 → 借方
- 未払金(負債)が増加 → 貸方
仕訳:
(借方) 備品 300,000 / (貸方) 未払金 300,000
注意: 固定資産の掛け取引では「買掛金」ではなく「未払金」を使います。買掛金は商品売買の掛け取引専用です。
例5: 土地と建物を一括購入
取引: 土地800万円と建物1,200万円を購入し、仲介手数料100万円とともに現金で支払った。
考え方:
- 仲介手数料は、土地と建物の価格比率で按分する
- 土地: 800万円 ÷ 2,000万円 = 40%
- 建物: 1,200万円 ÷ 2,000万円 = 60%
- 土地の付随費用: 100万円 × 40% = 40万円
- 建物の付随費用: 100万円 × 60% = 60万円
仕訳:
(借方) 土地 8,400,000 / (貸方) 現金 21,000,000
建物 12,600,000
ポイント: 複数の固定資産を同時に購入した場合、付随費用は価格比率で按分します。
固定資産の売却
固定資産を売却したときは、帳簿価額と売却価額を比較して、差額を損益として計上します。
帳簿価額とは
帳簿価額(ちょうぼかがく)とは、帳簿に記載されている固定資産の現在の価値のことです。別名「簿価」とも呼ばれます。
帳簿価額 = 取得原価 - 減価償却累計額
注意: 簿記3級の試験では、減価償却について学習する前の段階で固定資産の売却が出題される場合があります。その場合、「帳簿価額は○○円である」と問題文に明記されます。
減価償却の詳細は、決算整理のUnitで学習します。
固定資産売却損益の計算
売却価額 > 帳簿価額 → 固定資産売却益(収益)
売却価額 < 帳簿価額 → 固定資産売却損(費用)
売却価額 = 帳簿価額 → 損益なし
固定資産の売却時の仕訳
固定資産を売却したときの仕訳は、以下の3ステップで考えます。
仕訳の3ステップ
ステップ1: 売却代金を受け取る(借方) ステップ2: 固定資産を帳簿から減らす(貸方) ステップ3: 差額を売却損益として計上
例6: 売却益が出る場合
取引: 帳簿価額80万円の備品を100万円で売却し、代金は現金で受け取った。
考え方:
- 現金(資産)が増加 → 借方 100万円
- 備品(資産)が減少 → 貸方 80万円
- 売却価額100万円 - 帳簿価額80万円 = 売却益20万円
- 固定資産売却益(収益)が発生 → 貸方 20万円
仕訳:
(借方) 現金 1,000,000 / (貸方) 備品 800,000
固定資産売却益 200,000
ポイント: 売却益は収益なので貸方に記入します。
例7: 売却損が出る場合
取引: 帳簿価額50万円の車両運搬具を40万円で売却し、代金は当座預金に入金された。
考え方:
- 当座預金(資産)が増加 → 借方 40万円
- 車両運搬具(資産)が減少 → 貸方 50万円
- 売却価額40万円 - 帳簿価額50万円 = 売却損10万円
- 固定資産売却損(費用)が発生 → 借方 10万円
仕訳:
(借方) 当座預金 400,000 / (貸方) 車両運搬具 500,000
固定資産売却損 100,000
ポイント: 売却損は費用なので借方に記入します。
例8: 損益が出ない場合
取引: 帳簿価額30万円の備品を30万円で売却し、代金は現金で受け取った。
考え方:
- 現金(資産)が増加 → 借方 30万円
- 備品(資産)が減少 → 貸方 30万円
- 売却価額 = 帳簿価額 → 損益なし
仕訳:
(借方) 現金 300,000 / (貸方) 備品 300,000
ポイント: 帳簿価額と売却価額が同じ場合、売却損益は発生しません。
例9: 手数料が発生する場合
取引: 帳簿価額150万円の車両運搬具を180万円で売却した。売却手数料5万円を差し引いた残額を現金で受け取った。
考え方:
- 実際に受け取った金額: 180万円 - 5万円 = 175万円
- 現金(資産)が増加 → 借方 175万円
- 支払手数料(費用)が発生 → 借方 5万円
- 車両運搬具(資産)が減少 → 貸方 150万円
- 売却益: 180万円 - 150万円 = 30万円
- 固定資産売却益(収益)が発生 → 貸方 30万円
仕訳:
(借方) 現金 1,750,000 / (貸方) 車両運搬具 1,500,000
支払手数料 50,000 固定資産売却益 300,000
ポイント: 売却手数料は、売却価額ではなく費用として処理します。
固定資産の種類による注意点
建物
- 減価償却の対象: 建物は時間とともに価値が減少するため、減価償却が必要
- 付随費用が多い: 仲介手数料、登記費用、不動産取得税など
- 土地と一緒に購入: 土地と建物をセットで購入することが多い
備品
- 種類が多い: パソコン、机、椅子、応接セット、エアコン、コピー機など
- 少額減価償却資産: 取得価額が10万円未満の場合は、消耗品費として処理する場合もある
- 減価償却の対象: 使用とともに価値が減少
車両運搬具
- 陸上の運搬用車両: 自動車、バイク、トラック、フォークリフトなど
- 付属品も含む: カーナビ、ETC、ドライブレコーダーなど
- 機械装置との区別: 工事用のブルドーザーやパワーショベルは「機械装置」
土地
- 減価償却の対象外: 土地は時間が経過しても価値が減らないため、減価償却しない
- 売却損益のみ: 取得後の処理は、売却時のみ
- 不動産取得税: 任意で取得原価に含める(簿記3級では含める前提で出題されることが多い)
よくある間違いと注意点
間違い1: 付随費用を別勘定で処理してしまう
❌ 間違い:
(借方) 建物 20,000,000 / (貸方) 現金 20,500,000
支払手数料 500,000
✅ 正しい:
(借方) 建物 20,500,000 / (貸方) 現金 20,500,000
付随費用は取得原価に含めます。
間違い2: 固定資産の掛け取引で買掛金を使う
❌ 間違い:
(借方) 備品 300,000 / (貸方) 買掛金 300,000
✅ 正しい:
(借方) 備品 300,000 / (貸方) 未払金 300,000
買掛金は商品売買専用です。固定資産の掛け取引では未払金を使います。
間違い3: 売却損益の借方・貸方を逆にする
売却益は収益(貸方)、売却損は費用(借方)です。
❌ 間違い:
(借方) 現金 1,000,000 / (貸方) 備品 800,000
固定資産売却益 200,000
✅ 正しい:
(借方) 現金 1,000,000 / (貸方) 備品 800,000
固定資産売却益 200,000
固定資産と関連する勘定科目
減価償却累計額
固定資産の価値減少分を累積的に記録する勘定科目です。減価償却の単元で詳しく学習します。
固定資産台帳
固定資産の取得から売却・除却までを管理する補助簿です。固定資産台帳の単元で詳しく学習します。
実務での固定資産管理
固定資産の取得判断
企業では、取得金額が10万円以上の備品などを固定資産として計上します。
- 10万円未満: 消耗品費として一括費用計上
- 10万円以上: 固定資産として資産計上し、減価償却
資産番号の付与
実務では、固定資産1つ1つに資産番号を付けて管理します。
例: 資産番号 B-001(建物)、V-005(車両)
定期的な実地棚卸
年に1回程度、固定資産の実地棚卸を行い、帳簿と実際の資産を照合します。
まとめ
このレッスンでは、固定資産の取得と売却の仕訳について学びました。
重要ポイント
- check_circle固定資産とは、1年超の長期間使用する資産
- check_circle取得原価 = 購入代金 + 付随費用
- check_circle付随費用は取得原価に含めて資産計上する
- check_circle固定資産の掛け取引では未払金を使う(買掛金ではない)
- check_circle売却損益 = 売却価額 - 帳簿価額
- check_circle固定資産売却益は収益(貸方)、売却損は費用(借方)
- check_circle簿記3級の主要な固定資産: 建物、備品、車両運搬具、土地
次のステップ
次のレッスンでは、その他の収益・費用の仕訳について学びます。給料、受取利息、支払利息など、営業外の取引の仕訳をマスターしましょう。また、固定資産の価値減少を記録する減価償却も、決算整理の単元で詳しく学習します。