法人税等 - 法人税・住民税・事業税の仕訳をマスターしよう
法人税、住民税及び事業税の基本的な概念、中間納付と確定申告の流れ、仕訳方法について学びます。法人税等の処理を正確に理解しましょう。
学習目標
- check_circle法人税、住民税、事業税の違いを理解する
- check_circle中間納付と確定申告の仕組みを説明できる
- check_circle仮払法人税等と未払法人税等の使い分けができる
- check_circle中間納付時・決算時・確定申告時の仕訳ができる
- check_circle還付がある場合の処理ができる
法人税等とは
**法人税等(ほうじんぜいとう)**とは、企業の利益(所得)に対して課される税金の総称です。損益計算書(P/L)で計算された税引前当期純利益に対して課税されます。
法人税等に含まれる3つの税金
法人税等は、正式名称「法人税、住民税及び事業税」と呼ばれ、以下の3つの税金で構成されています。これらをまとめて「法人三税」とも呼ばれます。
法人税・住民税・事業税の違い
1. 法人税
法人税は、企業の所得(利益)に対して課される国税です。
特徴:
- 課税主体: 国
- 課税対象: 企業の課税所得(利益)
- 赤字の場合: 納税不要
税率(簡略化):
- 中小企業: 約15〜23%
- 大企業: 約23〜30%
具体例:
課税所得が500万円の企業の場合
法人税 = 500万円 × 15% = 75万円
2. 法人住民税
法人住民税は、企業が事業所を構える地方自治体に納める地方税です。
構成:
- 都道府県民税 + 市町村民税
課税方法:
- 法人税割: 法人税額に対して課される(利益連動)
- 計算式: 法人税額 × 住民税率(約10〜20%)
- 均等割: 資本金や従業員数に応じた定額(利益に関係なく課される)
- 赤字でも納税義務がある
- 最低額: 年7万円程度
具体例:
法人税額が75万円、住民税率が17.3%、均等割が7万円の場合
法人住民税 = (75万円 × 17.3%) + 7万円 = 約20万円
3. 法人事業税
法人事業税は、企業が事業を行う際に利用する行政サービス(道路、上下水道など)の維持費用を負担するために課される地方税です。
特徴:
- 課税主体: 都道府県
- 課税対象: 企業の所得
- 重要な特徴: 翌期の損金に算入できる(法人税と住民税は損金不算入)
税率:
- 中小企業: 約3〜5%
- 大企業: 約7〜10%
具体例:
課税所得が500万円、事業税率が5%の場合
法人事業税 = 500万円 × 5% = 25万円
3つの税金の比較表
| 項目 | 法人税 | 法人住民税 | 法人事業税 |
|---|---|---|---|
| 課税主体 | 国 | 都道府県・市町村 | 都道府県 |
| 税の種類 | 国税 | 地方税 | 地方税 |
| 課税対象 | 所得(利益) | 法人税額 + 定額 | 所得(利益) |
| 赤字の場合 | 納税不要 | 均等割のみ納税 | 納税不要 |
| 損金算入 | 不可 | 不可 | 翌期に可能 |
法人税等と租税公課の違い
簿記で扱う税金には、法人税等と租税公課の2種類があります。これらは勘定科目も処理方法も異なるため、しっかりと区別する必要があります。
法人税等に該当するもの
法人税、住民税、事業税のみ
- 勘定科目: 「法人税、住民税及び事業税」
- 処理時期: 決算時に計上(決算整理仕訳として処理)
- 特徴: 利益に対して課される税金
租税公課に該当するもの
それ以外の税金
- 勘定科目: 「租税公課」
- 処理時期: 支払時に費用計上
- 具体例:
- 固定資産税
- 自動車税
- 印紙税
- 登録免許税
- 事業所税
詳しくは税金の仕訳で学習しましたが、この区別を誤ると減点されるので注意が必要です。
中間納付と確定申告の仕組み
法人税等は、年2回に分けて納付します。
納付の流れ
【会計期間】
4月1日(期首)
↓
(日々の営業活動)
↓
10月頃 ← 中間納付(前期実績の50%または仮決算)
↓
(日々の営業活動)
↓
3月31日(期末)← 決算確定
↓
5月頃 ← 確定申告・納付(残額を支払う)
中間納付とは
中間納付とは、会計期間の途中(通常6ヶ月経過時点)で、概算で法人税等を前払いすることです。
目的:
- 国や地方自治体の税収を安定させる
- 企業の納税負担を分散する
計算方法(2つの方式):
1. 前期実績方式(一般的)
中間納付額 = 前期の法人税等 × 50%
例:
前期の法人税等が200万円だった場合
中間納付額 = 200万円 × 50% = 100万円
2. 仮決算方式
上半期(6ヶ月)の決算を組んで税額を計算する方法。 業績が大きく悪化した場合に利用されることがあります。
法人税等で使う勘定科目
法人税等の仕訳では、3つの勘定科目を使い分けます。
1. 仮払法人税等(資産)
意味: 中間納付で前払いした税金
性質: 資産(まだ確定していない前払い金)
使用場面: 中間納付時の借方
例:
中間納付で100万円を支払った
→ 借方: 仮払法人税等 1,000,000
2. 法人税、住民税及び事業税(費用)
意味: 確定した法人税等の総額
性質: 費用
使用場面: 決算時の借方
例:
決算で法人税等が180万円に確定した
→ 借方: 法人税、住民税及び事業税 1,800,000
3. 未払法人税等(負債)
意味: 確定したが、まだ支払っていない税金
性質: 負債
使用場面: 決算時の貸方、確定申告時の借方
例:
決算で確定した180万円のうち、中間納付分100万円を差し引いた残り80万円が未払い
→ 貸方: 未払法人税等 800,000
法人税等の仕訳パターン
法人税等の処理は、3つのタイミングで仕訳を行います。
パターン1: 中間納付時の仕訳
取引: 10月に法人税等の中間納付100万円を現金で納付した
考え方:
- 仮払法人税等(資産)が増加 → 借方
- 現金(資産)が減少 → 貸方
仕訳:
借方:仮払法人税等 1,000,000 / 貸方:現金 1,000,000
解説: 中間納付は概算での前払いなので、「仮払法人税等」という資産勘定で一時的に処理します。まだ税額が確定していないため、費用としては計上しません。
パターン2: 決算時の仕訳
取引: 決算で法人税等が180万円に確定した。中間納付額は100万円である。
考え方:
- 法人税等(費用)が発生 → 借方(180万円)
- 仮払法人税等(資産)が減少 → 貸方(100万円)
- 未払法人税等(負債)が増加 → 貸方(80万円)
仕訳:
借方:法人税、住民税及び事業税 1,800,000 / 貸方:仮払法人税等 1,000,000
未払法人税等 800,000
解説: 決算で税額が確定したため、費用として計上します。中間納付で前払いした100万円は「仮払法人税等」を取り崩し、残り80万円は「未払法人税等」として負債に計上します。
パターン3: 確定申告時の納付仕訳
取引: 5月に確定申告を行い、残額80万円を普通預金から納付した
考え方:
- 未払法人税等(負債)が減少 → 借方
- 普通預金(資産)が減少 → 貸方
仕訳:
借方:未払法人税等 800,000 / 貸方:普通預金 800,000
解説: 決算時に計上した未払法人税等を支払うため、負債を減らす処理をします。
法人税等の仕訳の全体像
具体例で一連の流れを確認しましょう。
前提条件
- 前期の法人税等: 200万円
- 当期の税引前当期純利益: 600万円
- 法人税等の税率: 30%
- 中間納付: 前期実績の50% = 100万円
ステップ1: 中間納付時(10月)
中間納付額 = 200万円 × 50% = 100万円
仕訳:
借方:仮払法人税等 1,000,000 / 貸方:現金 1,000,000
ステップ2: 決算時(3月末)
法人税等の確定額 = 600万円 × 30% = 180万円
未払法人税等 = 180万円 - 100万円(中間納付) = 80万円
仕訳:
借方:法人税、住民税及び事業税 1,800,000 / 貸方:仮払法人税等 1,000,000
未払法人税等 800,000
影響: 損益計算書への反映
税引前当期純利益 6,000,000円
法人税等 △1,800,000円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
当期純利益 4,200,000円
ステップ3: 確定申告時の納付(5月)
仕訳:
借方:未払法人税等 800,000 / 貸方:普通預金 800,000
還付がある場合の処理
当期の業績が悪化し、確定した法人税等が中間納付額より少ない場合、還付を受けることがあります。
還付のケース
前提:
- 中間納付額: 100万円
- 決算で確定した法人税等: 70万円
- 差額30万円が還付される
決算時の仕訳
考え方:
- 法人税等(費用)が発生 → 借方(70万円)
- 未収入金(資産)が増加 → 借方(30万円)
- 仮払法人税等(資産)が減少 → 貸方(100万円)
仕訳:
借方:法人税、住民税及び事業税 700,000 / 貸方:仮払法人税等 1,000,000
未収入金 300,000
重要ポイント: 還付される場合は「未払法人税等」を使わず、「未収入金」を使います。
還付金受取時の仕訳
取引: 還付金30万円が普通預金に入金された
仕訳:
借方:普通預金 300,000 / 貸方:未収入金 300,000
還付加算金がある場合
還付金を受け取る際、利息に相当する「還付加算金」が加算されることがあります。
取引: 還付金30万円と還付加算金5千円が入金された
仕訳:
借方:普通預金 305,000 / 貸方:未収入金 300,000
雑収入 5,000
注意: 還付加算金は「法人税等」ではなく、その他の収益として「雑収入」で処理します。
簿記3級試験での出題ポイント
第1問(仕訳問題)
法人税等の仕訳は、第1問で1〜2問出題される可能性があります。
頻出パターン:
- 中間納付時の仕訳
- 決算時の仕訳(中間納付額が与えられている)
例題:
問: 決算において、法人税等が150万円に確定した。
なお、中間納付額90万円は仮払法人税等で処理している。
解答:
借方:法人税、住民税及び事業税 1,500,000 / 貸方:仮払法人税等 900,000
未払法人税等 600,000
配点: 3点
第3問(決算整理・財務諸表作成)
精算表の作成や決算整理後残高試算表の問題で、法人税等の決算整理仕訳が求められます。
出題形式:
- 「法人税等は○○円と見積もられる」という指示
- 中間納付額が試算表に「仮払法人税等」として記載されている
処理の流れ:
- 決算整理仕訳を精算表の修正記入欄に記入
- 損益計算書欄に「法人税等」を記入
- 貸借対照表欄に「未払法人税等」を記入
よくある間違いとその対策
間違い1: 租税公課と混同する
❌ 誤り:
決算で法人税等150万円が確定した
借方:租税公課 1,500,000 / 貸方:未払金 1,500,000
✅ 正解:
借方:法人税、住民税及び事業税 1,500,000 / 貸方:未払法人税等 1,500,000
対策: 法人税等は「法人税、住民税及び事業税」という専用の勘定科目を使うことを覚えましょう。
間違い2: 中間納付時に費用計上してしまう
❌ 誤り:
中間納付100万円を支払った
借方:法人税、住民税及び事業税 1,000,000 / 貸方:現金 1,000,000
✅ 正解:
借方:仮払法人税等 1,000,000 / 貸方:現金 1,000,000
対策: 中間納付はまだ税額が確定していないため、「仮払法人税等」で一時的に処理します。
間違い3: 未払法人税等と未払金を混同する
❌ 誤り:
決算時に未払分を「未払金」で処理
✅ 正解:
決算時には「未払法人税等」を使用
対策: 法人税等には専用の勘定科目「未払法人税等」があることを覚えましょう。「未払金」は備品購入代金などに使用します。
間違い4: 還付時に未払法人税等を使う
❌ 誤り:
還付がある場合に「未払法人税等」をマイナスで使う
✅ 正解:
還付がある場合は「未収入金」を使う
対策: 還付 = 受け取る権利(資産)なので「未収入金」を使います。
まとめ
このレッスンでは、法人税、住民税及び事業税の基本概念と仕訳方法について学びました。
重要ポイント
- check_circle法人税等 = 法人税(国税)+ 住民税(地方税)+ 事業税(地方税)
- check_circle納付は中間納付(概算)と確定申告(残額)の2回
- check_circle中間納付時: 仮払法人税等(資産)で処理
- check_circle決算時: 法人税、住民税及び事業税(費用)で費用計上
- check_circle未払分は未払法人税等(負債)で処理
- check_circle還付がある場合は未収入金(資産)を使用
- check_circle租税公課とは勘定科目も処理時期も異なる
次のステップ
Unit 08「株式会社の資本と税金」はこれで完了です。次はUnit 09「個人企業の資本」に進みましょう。個人企業の資本では、株式会社とは異なる個人企業特有の会計処理を学びます。