株式会社の資本と税金 signal_cellular_alt 難易度 2 schedule 40分

法人税等 - 法人税・住民税・事業税の仕訳をマスターしよう

法人税、住民税及び事業税の基本的な概念、中間納付と確定申告の流れ、仕訳方法について学びます。法人税等の処理を正確に理解しましょう。

学習目標

  • check_circle法人税、住民税、事業税の違いを理解する
  • check_circle中間納付と確定申告の仕組みを説明できる
  • check_circle仮払法人税等と未払法人税等の使い分けができる
  • check_circle中間納付時・決算時・確定申告時の仕訳ができる
  • check_circle還付がある場合の処理ができる

法人税等とは

**法人税等(ほうじんぜいとう)**とは、企業の利益(所得)に対して課される税金の総称です。損益計算書(P/L)で計算された税引前当期純利益に対して課税されます。

法人税等に含まれる3つの税金

法人税等は、正式名称「法人税、住民税及び事業税」と呼ばれ、以下の3つの税金で構成されています。これらをまとめて「法人三税」とも呼ばれます。


法人税・住民税・事業税の違い

1. 法人税

法人税は、企業の所得(利益)に対して課される国税です。

特徴:

  • 課税主体: 国
  • 課税対象: 企業の課税所得(利益)
  • 赤字の場合: 納税不要

税率(簡略化):

  • 中小企業: 約15〜23%
  • 大企業: 約23〜30%

具体例:

課税所得が500万円の企業の場合
法人税 = 500万円 × 15% = 75万円

2. 法人住民税

法人住民税は、企業が事業所を構える地方自治体に納める地方税です。

構成:

  • 都道府県民税 + 市町村民税

課税方法:

  1. 法人税割: 法人税額に対して課される(利益連動)
    • 計算式: 法人税額 × 住民税率(約10〜20%)
  2. 均等割: 資本金や従業員数に応じた定額(利益に関係なく課される)
    • 赤字でも納税義務がある
    • 最低額: 年7万円程度

具体例:

法人税額が75万円、住民税率が17.3%、均等割が7万円の場合
法人住民税 = (75万円 × 17.3%) + 7万円 = 約20万円

3. 法人事業税

法人事業税は、企業が事業を行う際に利用する行政サービス(道路、上下水道など)の維持費用を負担するために課される地方税です。

特徴:

  • 課税主体: 都道府県
  • 課税対象: 企業の所得
  • 重要な特徴: 翌期の損金に算入できる(法人税と住民税は損金不算入)

税率:

  • 中小企業: 約3〜5%
  • 大企業: 約7〜10%

具体例:

課税所得が500万円、事業税率が5%の場合
法人事業税 = 500万円 × 5% = 25万円

3つの税金の比較表

項目法人税法人住民税法人事業税
課税主体都道府県・市町村都道府県
税の種類国税地方税地方税
課税対象所得(利益)法人税額 + 定額所得(利益)
赤字の場合納税不要均等割のみ納税納税不要
損金算入不可不可翌期に可能

法人税等と租税公課の違い

簿記で扱う税金には、法人税等租税公課の2種類があります。これらは勘定科目も処理方法も異なるため、しっかりと区別する必要があります。

法人税等に該当するもの

法人税、住民税、事業税のみ

  • 勘定科目: 「法人税、住民税及び事業税」
  • 処理時期: 決算時に計上(決算整理仕訳として処理)
  • 特徴: 利益に対して課される税金

租税公課に該当するもの

それ以外の税金

  • 勘定科目: 「租税公課」
  • 処理時期: 支払時に費用計上
  • 具体例:
    • 固定資産税
    • 自動車税
    • 印紙税
    • 登録免許税
    • 事業所税

詳しくは税金の仕訳で学習しましたが、この区別を誤ると減点されるので注意が必要です。


中間納付と確定申告の仕組み

法人税等は、年2回に分けて納付します。

納付の流れ

【会計期間】

4月1日(期首)

(日々の営業活動)

10月頃 ← 中間納付(前期実績の50%または仮決算)

(日々の営業活動)

3月31日(期末)← 決算確定

5月頃 ← 確定申告・納付(残額を支払う)

中間納付とは

中間納付とは、会計期間の途中(通常6ヶ月経過時点)で、概算で法人税等を前払いすることです。

目的:

  • 国や地方自治体の税収を安定させる
  • 企業の納税負担を分散する

計算方法(2つの方式):

1. 前期実績方式(一般的)

中間納付額 = 前期の法人税等 × 50%

:

前期の法人税等が200万円だった場合
中間納付額 = 200万円 × 50% = 100万円

2. 仮決算方式

上半期(6ヶ月)の決算を組んで税額を計算する方法。 業績が大きく悪化した場合に利用されることがあります。


法人税等で使う勘定科目

法人税等の仕訳では、3つの勘定科目を使い分けます。

1. 仮払法人税等(資産)

意味: 中間納付で前払いした税金

性質: 資産(まだ確定していない前払い金)

使用場面: 中間納付時の借方

:

中間納付で100万円を支払った
→ 借方: 仮払法人税等 1,000,000

2. 法人税、住民税及び事業税(費用)

意味: 確定した法人税等の総額

性質: 費用

使用場面: 決算時の借方

:

決算で法人税等が180万円に確定した
→ 借方: 法人税、住民税及び事業税 1,800,000

3. 未払法人税等(負債)

意味: 確定したが、まだ支払っていない税金

性質: 負債

使用場面: 決算時の貸方、確定申告時の借方

:

決算で確定した180万円のうち、中間納付分100万円を差し引いた残り80万円が未払い
→ 貸方: 未払法人税等 800,000

法人税等の仕訳パターン

法人税等の処理は、3つのタイミングで仕訳を行います。

パターン1: 中間納付時の仕訳

取引: 10月に法人税等の中間納付100万円を現金で納付した

考え方:

  • 仮払法人税等(資産)が増加 → 借方
  • 現金(資産)が減少 → 貸方

仕訳:

借方:仮払法人税等 1,000,000 / 貸方:現金 1,000,000

解説: 中間納付は概算での前払いなので、「仮払法人税等」という資産勘定で一時的に処理します。まだ税額が確定していないため、費用としては計上しません。


パターン2: 決算時の仕訳

取引: 決算で法人税等が180万円に確定した。中間納付額は100万円である。

考え方:

  • 法人税等(費用)が発生 → 借方(180万円)
  • 仮払法人税等(資産)が減少 → 貸方(100万円)
  • 未払法人税等(負債)が増加 → 貸方(80万円)

仕訳:

借方:法人税、住民税及び事業税 1,800,000 / 貸方:仮払法人税等 1,000,000
                                               未払法人税等   800,000

解説: 決算で税額が確定したため、費用として計上します。中間納付で前払いした100万円は「仮払法人税等」を取り崩し、残り80万円は「未払法人税等」として負債に計上します。


パターン3: 確定申告時の納付仕訳

取引: 5月に確定申告を行い、残額80万円を普通預金から納付した

考え方:

  • 未払法人税等(負債)が減少 → 借方
  • 普通預金(資産)が減少 → 貸方

仕訳:

借方:未払法人税等 800,000 / 貸方:普通預金 800,000

解説: 決算時に計上した未払法人税等を支払うため、負債を減らす処理をします。


法人税等の仕訳の全体像

具体例で一連の流れを確認しましょう。

前提条件

  • 前期の法人税等: 200万円
  • 当期の税引前当期純利益: 600万円
  • 法人税等の税率: 30%
  • 中間納付: 前期実績の50% = 100万円

ステップ1: 中間納付時(10月)

中間納付額 = 200万円 × 50% = 100万円

仕訳:

借方:仮払法人税等 1,000,000 / 貸方:現金 1,000,000

ステップ2: 決算時(3月末)

法人税等の確定額 = 600万円 × 30% = 180万円
未払法人税等 = 180万円 - 100万円(中間納付) = 80万円

仕訳:

借方:法人税、住民税及び事業税 1,800,000 / 貸方:仮払法人税等 1,000,000
                                               未払法人税等   800,000

影響: 損益計算書への反映

税引前当期純利益    6,000,000円
法人税等           △1,800,000円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
当期純利益          4,200,000円

ステップ3: 確定申告時の納付(5月)

仕訳:

借方:未払法人税等 800,000 / 貸方:普通預金 800,000

還付がある場合の処理

当期の業績が悪化し、確定した法人税等が中間納付額より少ない場合、還付を受けることがあります。

還付のケース

前提:

  • 中間納付額: 100万円
  • 決算で確定した法人税等: 70万円
  • 差額30万円が還付される

決算時の仕訳

考え方:

  • 法人税等(費用)が発生 → 借方(70万円)
  • 未収入金(資産)が増加 → 借方(30万円)
  • 仮払法人税等(資産)が減少 → 貸方(100万円)

仕訳:

借方:法人税、住民税及び事業税  700,000 / 貸方:仮払法人税等 1,000,000
      未収入金                  300,000

重要ポイント: 還付される場合は「未払法人税等」を使わず、「未収入金」を使います。


還付金受取時の仕訳

取引: 還付金30万円が普通預金に入金された

仕訳:

借方:普通預金 300,000 / 貸方:未収入金 300,000

還付加算金がある場合

還付金を受け取る際、利息に相当する「還付加算金」が加算されることがあります。

取引: 還付金30万円と還付加算金5千円が入金された

仕訳:

借方:普通預金 305,000 / 貸方:未収入金 300,000
                               雑収入     5,000

注意: 還付加算金は「法人税等」ではなく、その他の収益として「雑収入」で処理します。


簿記3級試験での出題ポイント

第1問(仕訳問題)

法人税等の仕訳は、第1問で1〜2問出題される可能性があります。

頻出パターン:

  • 中間納付時の仕訳
  • 決算時の仕訳(中間納付額が与えられている)

例題:

問: 決算において、法人税等が150万円に確定した。
   なお、中間納付額90万円は仮払法人税等で処理している。

解答:

借方:法人税、住民税及び事業税 1,500,000 / 貸方:仮払法人税等  900,000
                                               未払法人税等  600,000

配点: 3点


第3問(決算整理・財務諸表作成)

精算表の作成や決算整理後残高試算表の問題で、法人税等の決算整理仕訳が求められます。

出題形式:

  • 「法人税等は○○円と見積もられる」という指示
  • 中間納付額が試算表に「仮払法人税等」として記載されている

処理の流れ:

  1. 決算整理仕訳を精算表の修正記入欄に記入
  2. 損益計算書欄に「法人税等」を記入
  3. 貸借対照表欄に「未払法人税等」を記入

よくある間違いとその対策

間違い1: 租税公課と混同する

❌ 誤り:

決算で法人税等150万円が確定した
借方:租税公課 1,500,000 / 貸方:未払金 1,500,000

✅ 正解:

借方:法人税、住民税及び事業税 1,500,000 / 貸方:未払法人税等 1,500,000

対策: 法人税等は「法人税、住民税及び事業税」という専用の勘定科目を使うことを覚えましょう。


間違い2: 中間納付時に費用計上してしまう

❌ 誤り:

中間納付100万円を支払った
借方:法人税、住民税及び事業税 1,000,000 / 貸方:現金 1,000,000

✅ 正解:

借方:仮払法人税等 1,000,000 / 貸方:現金 1,000,000

対策: 中間納付はまだ税額が確定していないため、「仮払法人税等」で一時的に処理します。


間違い3: 未払法人税等と未払金を混同する

❌ 誤り:

決算時に未払分を「未払金」で処理

✅ 正解:

決算時には「未払法人税等」を使用

対策: 法人税等には専用の勘定科目「未払法人税等」があることを覚えましょう。「未払金」は備品購入代金などに使用します。


間違い4: 還付時に未払法人税等を使う

❌ 誤り:

還付がある場合に「未払法人税等」をマイナスで使う

✅ 正解:

還付がある場合は「未収入金」を使う

対策: 還付 = 受け取る権利(資産)なので「未収入金」を使います。


まとめ

このレッスンでは、法人税、住民税及び事業税の基本概念と仕訳方法について学びました。

重要ポイント

  • check_circle法人税等 = 法人税(国税)+ 住民税(地方税)+ 事業税(地方税)
  • check_circle納付は中間納付(概算)確定申告(残額)の2回
  • check_circle中間納付時: 仮払法人税等(資産)で処理
  • check_circle決算時: 法人税、住民税及び事業税(費用)で費用計上
  • check_circle未払分は未払法人税等(負債)で処理
  • check_circle還付がある場合は未収入金(資産)を使用
  • check_circle租税公課とは勘定科目も処理時期も異なる

次のステップ

Unit 08「株式会社の資本と税金」はこれで完了です。次はUnit 09「個人企業の資本」に進みましょう。個人企業の資本では、株式会社とは異なる個人企業特有の会計処理を学びます。